ハタチの読書録

20歳大学生の日々の読書を綴る

「地方消滅」増田寛也

     この本は、地方創生を夢見る人達の必読書だ。夢を語るには、それ相応の現実を踏まえることが大切だ。岩手県の知事を務めたこともあり、地方での実地経験に長けた著者は、このレポートで、地方の人口高齢地域は勿論、いずれ地方の中核都市でさえ消滅の危機にあると様々な指標とデータにより示唆している。私も東北生まれの生粋の地方人だが、18歳になり大学進学を本格的に熟慮し始める頃、周りの学生を見ても当たり前のように「東京の大学」に進学すると異口同音に言っていたのを思い出す。東京は地方から若い人口を吸い出すブラックホールだ。東京に魅力を感じ、東京に進学して、東京で就職して、東京に永住して、東京で老後を迎えたいという人々がどれだけの規模いるか計り知れない。このような傾向が進めば、地方は死滅し、東京近辺だけが栄える「極点社会」を迎えるのは時間の問題だ。よく若者は「地方には魅力がない!その点東京は便利だし、働き口が多いし…」という主張をし、地方を非難し、東京を賛美する印象があるが、私もそうであったし間違いないだろう。「もっと地方に〜があれば」と非難するのは簡単だが、それを実行せずに無責任に傍観しているのは、私も一人の故郷を憂える若者として、心外である。地方創生に貢献する!とは言わないが、何かしらの還元の仕方はあるだろう。

    最大の問題点は、これから日本全体が高齢化と出生率の減少と労働力人口の減少という3つの悲劇が待ち構えている。これはセットで考えるべきでない。それぞれに必要な措置を講じなければならないのだ。著者は本書で何度も地方は「ダム機能」を果たすべきということを繰り返している。つまり地方で何とか若者をせき止める機能、例えば地方中核都市を拠点に大学を誘致する、巨大アミューズメント施設を作るなど手段は色々考えられるだろう。まずはそこからだ。地方の消滅を先延ばし

するのではなく、私達世代がその基盤を完成させるのだ。さもなくば2040年には惨憺たる社会が待ち受けているだろう。